日本海ボルダーツアー 男鹿編

2022年GW、日本海の北の方のボルダリングエリアを巡った時の記録。

5.3

GW後半、ひとり男鹿へ。

秋田の県境を越えると「ババヘラアイス」を売ってるおばちゃん?が所々で視界に入り、本当に実在していたことに感動を覚えた。

男鹿半島の海岸線には風力発電の風車が立ち並んでいた。確かに風が強い。

9:30ごろ、館山エリアに到着。

今回男鹿に来たのは、ほとんど「鬼が来たりて笛を吹く」二段を登るためだった。

「GWだし、行ったことないそんなに遠くないところで、かっこいい課題ないかなあ」と探していたときにYouTubeでこの課題を見つけ、この課題に目標を定めて男鹿まできた。他にも色々登れたらそれは嬉しいけど、基本的にはこれを登るのが目標。

実物は映像で見るよりもさらにかっこよかった。下部の圧倒的な傾斜、広いルーフ。そして何よりデカい!

事前情報では、下地に海水がきているときもあるということだったが、概ね水は引いているようだった。

男鹿ボルダーはそういう課題が多く、よくクライマーは「満潮のときは登れない」とか「干潮のときに来なきゃいけない」とか言ってる。けれど、実情は多分潮汐によるものではなく、波の高さによる変化だと思う。その証拠に、この日は終日下地の水の様子が変化することはなかった(潮の満ち引きは一日二回あるので、潮汐が原因であるならば一日の間に下地が変化しないとおかしい。月齢による変化もあるだろうが….)。鬼岩やおにぎり岩などの課題を登りたいなら、塩の満ち引きではなく波の高さを見たらいいと思う。

近くの椿漁港の海天気が海天気.jp などで見れるので、参考に。ちなみにこの日は沿岸波浪が1.0mくらいだった。 5.4は2.3m~2.5mとかで、下地は終日水没していたので、2mを越えるとおにぎり岩や鬼岩はほぼ登れないと考えたらいいと思う。

話を戻す。「鬼が来たりて笛を吹く」はルーフ奥からスタートし、数手左にトラバースしてから直上する課題。傾斜が強い下部パートの10手ほどが核心。

フラッシュは流石にできなかったが、ムーブはすぐに解決することができた。

その後、10分ほどレストしてトライ。

初めの三手ほどはスタンスで傾斜を殺しながら。カンテ際のホールドを取ってから、右手を寄せるムーブが悪い。左ヒールの位置に若干迷ったが、なんとか寄せられた。二つ連なっている丸いホールドに左手をデッド。これは見た目より難しくないが、ここに右手を寄せるのはバランシーで絶妙に悪い。このシークエンスが強度的には核心だが、左ヒールがしっかり効いていて成功。そのまま左手をガバスロットへ、さらに二手ほどキャンパを挟んでガバをマッチ。

あとは高度のメンタル核心だった。ガバが所々に隠れているが、それを見つけるのに結構苦労し、かなりパンプした。また、ガバ足があるので踏んでみたら、かなり大きいホールドが音を立てて軋んだのは恐ろしかった。かなり時間がかかったトライだったが、なんとか岩の上に立つことができた。

ということで一日目にして目標の課題を完登することができた。

実際登ってみても素晴らしいラインだった。特に傾斜の強いパートのムーブは秀逸で、いかに足を切らずに難しい向きのホールドを処理できるかの勝負だった。名前もかっこいい。

午後は合流したパートナーと、他の岩を偵察したりしながらおにぎり岩へ。

ラインがよくわからなかったので現場に居合わせたクライマーの方々に教えていただいた。他の方々は「タイラント」初段をやっているそうだったので、あまりラインの被らなそうな「怒涛」二段をトライすることにした。

怒涛は大ガバからスタートし、この岩では一番右でマントルを返す課題。傾斜が緩くなってからが難しいという男鹿には珍しい(?)課題だそうだ。

はじめは傾斜が強く、手が悪いが足はいい。後半は傾斜が緩いがホールドが細かい。ムーブ強度も後半の方が強く、かつ繊細。水が引いていれば下地は良い。

何度かマントルまで突入するも、どうにも上部のカチの保持感が悪い。上部はスラブで、日光を遮るものも何もない。また、スラブ面は海の方向を向いている。日本海側の岩場において、岩が海の方向を向いているということは、すなわち西向きということであり、午後以降はどんどん日が当たることを意味している。

これ以上高度が上がる気配もなかったし、カチで指皮がやられそうなので、怒涛は明日以降に持ち越し。

5.4

引き続き怒涛を登るため館山エリアへ。しかし、昨日より断然波が高く、下地は水没。

登れるのは剛力がある金棒岩、らんか岩、崩壊岩だけだった。まあ下地を気にしなければなんだって登れるだろうが….

ということで、「剛力」初段をトライ。後ろの岩に触れずに登るのが難しかったが、男鹿の他の課題と比較してもかなり登りやすかった。

同じ岩で同じスタートの「彩芽」二段も登った。ルーフをガシガシ登っていくジムナスティックな課題。指が痛い。とても面白い。

こちらは2時間ほどかかったが登れた。リップ取りの一手が、ヒールだと出れず、トーフックだと体が余る感じがあり、感覚を掴むのに時間がかかった。

最後に「獄門」初段。

一番上まで行くと鬼岩くらいの高さのかなり大きい岩だが、クライミングの難しさは地面ギリギリの狭いルーフに凝縮されている。

獄門はトポには「ルーフ中間のカチ棚から海側へ抜ける」と書いてある。多分これだろうなというホールドはあったものの、ラインがよくわからず、YouTubeでスタートを確認した。しかし、見た動画のほとんどでは、セパレートスタートのように見える感じで離陸している。「カチ棚からスタート」ならマッチスタートになるはずでは?何が正しいかよくわからなかったが、そもそもYouTubeにアップしている人が正しいとは限らない。

誰の言葉だったか、「迷ったら、より厳しくより美しい方を選べば良い」。

ボルダラーとしてのセンスってそういうことだよな。知らんけど。

ということでスタートは動画のような感じに。2手目のピンチが甘く、それによって3手目の寄せ?がかなりハードだった。地面も近く、これまた地面につかないようにする核心だった。こういう課題はあまり人気にはならないが、ボルダリングなのだからそういう難しさがあってもいいと思う。

これを登った後、カンカネエリアを偵察に。裏カンカネエリアの巨大ルーフまで見に行った。帰ってくるころにはかなりヘロヘロだった。

5.5

館山エリアにはまだ登るべき課題が残されていたが、男鹿は今日で最後と決めていたので、カンカネエリアへ。

目的は「」二段。事前情報でも、結構多くの人が面白いと勧めてくれた。

岩は130度くらいのどっ被り。高さは、鉛直方向で3mくらい?そんなに高い岩ではないが、傾斜地にあり、登る面が低い方を向いているので、下地は悪い。リップ付近で振られて落とされると結構大惨事になると思う。

内容は「ボルダリング」という感じの、本当に真っ向勝負系。アンダースタートからの離陸、初手が最も強度が高いと感じた。その後も、ギザギザしたカチをつなぎ、足捌きで負荷を殺しながら高度を上げ、難しくないが下地のプレッシャーのあるマントルを返す。

結論から言うとできなかった。というか、離陸、一手目が一度もできなかった。門前払いとはこのことか。正確に言えば、スタートにマットを積めば何度かできたのだが、それはフリークライミングではない。

一手目を取ったところからであれば、上部は何度か抜けることができたが、やはり一手目ができない。

ということで鱗は敗退。ここまで調子良く登ってきていたが、まあそう全部が全部都合よくうまく行くことなんてないってことか。

実は今日はかなりゆっくり起床し、鱗を登り始めたのは昼前だったため、敗退しカンカネエリアを後にする頃にはかなり陽は落ちていた。

今日なにも成果なしというのは悲しいので、急いでマットを片付け、館山エリアへ戻る。

2日目とは打って変わって、水は引いており、怒涛や疾風は登れそうな雰囲気だった。迷うことなく1日目に敗退した「怒涛」二段へ。

直前までトライしていたらしいクライマーの方が、「もう西陽が当たりすぎて状態悪いよ」と教えてくれたが、今日これ以上待っていたら日が暮れるし、次なんていつだかわからないので、トライする以外の選択肢はなかった。

一昨日作ったムーブは流石に全部覚えているし、アップはもう散々やった。最初から繋げトライへ。

1回目はリップ取りを外して落ちる。

2回目でリップを取る。核心のマントルで重要なのは右手の指のヌメり具合。リップ上のホールドを左手でとった時点で右手をシェイクする余裕があった。右手をズボンのチョークで拭く。そのままマントルに突入。極小カチを全力で握りこむ右手指の感覚は、1日目と違って悪くない。そのままマントルを返し、岩の上に立つことができた。

グレードに関してはもはやよくわからないが、素晴らしい課題だったのは間違いない。下部の大きい動きから、集中力のいるマントル、とても素晴らしい構成だった。下地もいいし、人気課題なのも頷ける。

少し時間が余ったので、10分ほど「疾風」初段をやったが、流石にできなかった。そりゃそうか。

三崎編へ続く。